M-SUZUKI_blog

GSJ主幹”M-鈴木”の、日常とかバトルテックの話とか。

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●フェニックスホークのヴァリエーションと形式番号●

 この人類の版図では実に数多くのメックが造られて来ました。
 その中でも随一の生産機数を誇る中量級メック〓それがPXH系列(※1)の高機動メック「フェニックスホーク」です。
 勿論PXH系以外にも大量に生産されたメックは存在しますが、驚くべき点は「フェニックスホークの機体識別番号の世代Noが1のままである」と言う点です。
 殆んどのメックは設計・開発され、量産に至って以降も様々な問題から機体設計の根幹にまで及ぶ様な、大幅なる設計変更を余儀なくされた来ました。
 そして、その度に世代Noが更新されている訳ですが、フェニックスホークのそれは1であり、機体の基本的な設計に手が加えられていない事を意味しているのです。
 この事実は驚嘆すべき(と言うよりもその事実を疑うべき)事と言えます。
 何故ならフェニックスホークが開発されたのは、かの「マッキー」から遅れること僅かに20年。
 星間連盟として僅か2機種目のロールアウトだったと言う事です。
 果たしてこの当時、見た者の失笑を買ったとさえ言われたマッキーの僅か20年後にこの様な完成度の高いメックが登場し得たのでしょうか?
 PXH系の原型機「PXH−1」のロールアウトは2459年
 登場当時、PXHは驚異的な機動性と強靭な耐久性から注目を集めます。
 重量は中戦車程度、四肢の末端までくまなく鎧う装甲もその重量に恥じない強靭なもので、大口径ACの1撃にさえ耐え得るものでした。
 主武装には新興の光学兵器メーカーであるハーモン社が市場に投入したばかりのHL−23T大口径レーザーを右腕に備え、複数の補助火器と対ソフトスキン用火器が付随しています。
 勿論、これだけならば通常の戦闘用装軌車輌と何ら変わる処はありません。
 問題はその機動性能です。
 同重量の装軌主力戦車に遜色ない装甲と火力を有しながら最大戦闘速度は90km/hにも達し、悪路・阻害地形の走破性は装軌車輌のそれをも上回ったのです。
 更に四肢を用いた直接打撃攻撃能力の付与が在来型装甲兵器との差を決定付けました。

 この様にマッキーとは異なる方向性でマイアマーと核融合炉の組み合わせの有効性を示す事に成功したフェニックスホークでしたが、依然として不安要素を抱えていたのも事実です。(※2)
 まず1つ目は核融合炉の安定性の問題です。
 この問題はフェニックスホークに先立ちマッキーが制式化された際既に問題視されていたのですが、20年を経て猶激しい加速度・電磁干渉環境下で安定した出力を得る事は困難でした。
 ましてや戦闘用メックを稼動する為には人工筋肉と各モーター、数多くの電子機器への給電にエネルギー兵器の励起、更には精密機器のシールドにと一瞬一瞬で激しく増減する要求出力を満たそうとする事は、只でさえデリケートな核融合炉の制御系に時として過剰な負荷だったのです。
 その結果、メックに搭載された核融合炉は予期し得ないタイミングで生じる出力の不足や放熱能力の急減に悩まされる事になります。
 解決策は技術の洗練か、力業かの2択であり、オーガス重工の技術者達は後者を選択します。
 PXH系はGM270核融合炉に補助安定装置と大容量プールコンデンサを追加する事で戦闘環境下で確実な作動を保証するに至りました。
 2つ目の問題点は人工筋肉の性能不足です。
 未だ化学的に安定な素材とは言えなかった初期の人工筋肉は過熱状態では急速に劣化する事が確認されていたのです。
 その不具合を未然に防ぐ為PXH−1の脚部には各1基、計2基の追加放熱器が装備されました。

 これら2つの問題点への対策は、実に3tもの貴重な質量をPXHから奪い去りました。
 結果としてPXH系に搭載を検討されていた阻害地形迂回用の噴射推進装置のプランは一旦白紙に戻される事になります。
 (その搭載は陸戦兵器の概念を一変させる筈でした)
 
 2481年、核融合炉の精度とシールド技術の向上は補助装置を不用とし(皮肉な話ではありますが、この左右胴に装備されていた核融合炉安定補助装置のスペースは、後々に軽量核融合炉を搭載する際にそのまま利用が可能でした)、人工筋肉は耐熱性の高い仕様に更新され、不用な装備を取り去り浮いた3tの質量を左右胴体のフレキシブルポッドに収められた3連の墳進装置(※3)に置き換える事で遂にPXH系は設計者の意図した姿での完成を見ます。
 同時に通信システムは最新のテックバトルコムに変更され、非常に高い通信能力を付与されます。この事はPXHを優秀な偵察メックの座に引き上げました。
 こうして事実上生まれ変わったPXH(正確にはPXH−1A1となります)は2482年から量産態勢に移行し、以前にも増した剣呑な偵察・強襲メックとして各武装陣営に認識されて行く事になります。
 しかし、地球帝国は更新されたPXHの機体番号を敢えて変更しませんでした。
 それは「本来この機体はこうなる筈であった」とのオーガス重工技術陣の主張があった事も事実ですが、何よりも国力と技術力の誇示と言う目的があった可能性も否めません。
 この様な機体番号の差し替えによる機体基本性能の優秀さの宣伝と言う行為は国家の技術力を誇示する目的で繰り返し行われており、戦争を目前に控え(乃至その緊張を抱えた)ている場合顕著であり、古代地球(20世紀中盤)でも欧州の第三帝国が実践しています。
 帝国が抱える航空機メーカーMe社のbf109系機体であると公表された高速度試験航空機は、偽り無く驚くべき高速での飛行を披露してのけましたが、その実bf109系とは全く別の機体だったのです。
 しかしこうした「造られた大々的発表」は確かに戦意高揚の一翼を担っていたと言う事です。

 この様に完成を見たPXH−1(PXH−1A1)は、中心領域の到る所で見る事が出来る程に大量に生産されました。
 しかし31世紀の現在、衰退した科学技術はこの機体生産の生産に暗い影を落し始めています。
 高性能故に高価で製造が困難なテックバトルコムの生産が追いつかず、補修整備部品も不足がちだと言えます。
 そもそも電磁騒乱下での通信を目的にしていたとは言え、唯の高機動強襲メックとしてのPXHにはオーバースペックであったとの指摘があったのも事実です。
 (実際、大量に生産されているフェニックスホークの30%以上は、より安価で入手しやすい通信システムに交換されており、テックバトルコムが貴重である事実を強調しているのです。勿論その強力な通信装置に頼らずとも厳然としてPHX系メックは優秀な上位偵察機であり、高機動戦闘メックとして機能します。)

 さて、それでは今日PXHにはどんなヴァリエーションが現存しているのでしょうか?(※4)

 PXH−1(PXH−1A1)
 一般に標準型と呼ばれている仕様で、完全な「スティンガーの上位機種」です。
 標準的な偵察用軽量級メックと同等の機動性と、中量級以上のメックと渡り合えるだけの重火力と重装甲を兼ね備えており、加えて高い妨害貫通能力を有する通信システムを搭載し、理想的な偵察小隊指揮・遊撃用メックに仕上がっている事で有名です。
 武装は左右腕に各々1門づつ(計2門づつ)対象配置された中口径レーザーとマシンガンに加えて右手に装備した主力火器、大口径レーザーです。
 左右胴の上部にせり出したフレキシブルポッドに各3基のジャンプジェットが収納されており、装甲兵器であるメックに驚く程柔軟な空中機動能力を付与しています。
 追加放熱器は搭載されていません。

 PXH−1D(PXH−1A1D)
 恒星連邦で使用されるPXH系の殆どは両腕のマシンガンと胴体の弾薬を2基の追加放熱器に換装したこのD型です。
 機能的には初期型のPXH−1に近く、2基の追加放熱器が高機動強襲機としての性能を特化していると言えます。
 その外観はA型と殆ど同一であり遠目に識別は困難です(※5)が、脚部の放熱器が稼動している為機動時、戦闘時は赤外線映像で容易に識別が可能です。

 PXH−1K(PXH−1A1K)
 主にドラコ連合で運用されているPXHです。
 この仕様は3基の追加放熱器を装備しており、装甲と火器をも増設しています。
 外観は大幅な変化を見せており、最大の相違点は左右胴のフレキシブルポッドの替わりに頭部に追加された装甲カバーでしょう。
 このカバーはPXHの頭部形状をPNT系に非常に似たものとします。(※6)

 PXH−1M(PXH−1A1M)(※7)
 M型は自由世界同盟で使用されている仕様です。
 このタイプは右腕の大口径レーザーを10連LRMに換装し、マシンガンとその弾薬の替わりにLRMの弾薬2tを搭載しています。
 そもそもLRM搭載型はLAM仕様のPXH系から逆派生したものであり、その系統樹で追うならばPXH−3Mとでも呼称するべきでしょう。
 少なくともFCSはM型LAM−PXHからフィードバックされたものでした。
 但し、LRMの給弾チューブはマシンガン用の給弾チューブを拡大して転用している為スペースが不足しており、給弾不良発生の原因となっています。

※1
 各メックは形式番号に因んだ愛称を与えられ、それにより機種を大別させています。
 そして形式番号の末尾近くの数字は開発世代、又は投入技術背景別に統一される傾向があり、その後ろのアルファベットはその同一世代内でのヴァリエーションを示す傾向があります。
 例えるなら3025年代に一般に見られる「WVN−6R」ウルヴァリーンはWVN系第6世代であり、Rは標準仕様である事を示します。
 そして末尾がMなら自由世界同盟仕様、Kならドラコ連合仕様となっています。
 こう言った事は皆様も良く御存知の事と思いますが、為念

※2
 こうした問題はフェニックスホークの設計に起因するものでは無く、未成熟な技術故のものでした。

※3
 PXHにジャンプジェットが搭載され、偵察行動が可能な高機動戦闘メックに生まれ変わったのは初のジャンプジェット搭載メック「ワスプ」の出現から遅れる事10年。
 ワスプの補充機として設計されたスティンガーが成功し、その設計システムが流用可能となった2年後になります。
 満を持して開発されたPXHのジャンプジェットは独特な物で、PXHの他ではSPD系だけが装備しています。
 代償として左右胴に殆ど他に何も搭載不可能ではありますが、ジャンプジェットが収納されたフレキシブルポッドの可動範囲は広く、柔軟な空中機動能力を実現可能です。

※4
 運用されていた全てのPXH−1は2498年に1A1型か1A1K型への改修を終了しており、現在原型機である1型を見かける事はまずありません。

※5
 脚部に放熱器を追加装備するスペースは元々PXH系に備わっていた物です。
 その為D型への改造は非常に容易な作業になっています。
※6
 2739年にロールアウトしたPNT系メックはPPCを装備した剣呑な軽量級メックとして有名ですが、開発当初のPNTは大口径レーザーを装備していました。
 恐らくPXHの廉価版として軽量低速化を図り、開発された物と思われます。

※7
 勿論このM型はオフィシャルの仕様ではありません。
 私、M−鈴木の妄想です。
 しかし、M型LAMフェニホの存在から有り得るのでは無いか?と考えて設定してみました。
 如何なものでしょう?

 注)本考察は推論によるでっちあげであり、オフィシャルの設定に完全に一致するものではありません。
   オフィシャルの記述と食い違う部位はそちらを優先するようにご注意願います。
   ・・・・採用してくんないかなぁ?(妄想)
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