M-SUZUKI_blog

GSJ主幹”M-鈴木”の、日常とかバトルテックの話とか。

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降下船の限界積載能力を重箱の隅を突付くように検証してみたい

どうにも久々だ・・・書き込むパスを忘れていたのは内緒(反省)
さて、早速だが表題の話題にお付き合い頂こう♪

通常、降下船の積載能力は「○○t」と明記されているのではある
だが、降下船は現代の技術水準から見れば恐るべきことに長時間(実に1ヶ月にも及ぶ)1G加速を継続出来る高性能の推進装置に恵まれており、戦闘機動においてや2G、3Gも当たり前と言う超絶性能の航宙艦なのである。
つまり、その船体構造は自重の数倍(種類によって異なるが、概ね2〜3倍)の継続的荷重を平然と受け止める構造強度を持っているのだ。(当然繰り返し荷重や衝撃荷重に備えて部分的には10〜20Gに耐えられるのは設計上言うまでも無い話としてだ)
この事は逆に言えば「途中で戦闘機動を行わない」前提ならば、「満載時自重と同質量の追加積載を行っても構造は耐えられる」と言う事を意味する。
当然といえば当然の話で、仮に設計満載自重1000tを3G(ルール上の推力「巡航4最大6」で6の事)で加速する能力を持つ前提で設計されたとする降下船(に限らず構造物全て)があったなら、それは自明の理として各部位は自身と自身が支えなくてはいけない部位の合計重量(質量)の3倍の荷重が加わっても耐えられる様に造られている。
つまり、1Gの環境(たとえば地球の地表)でなら各部位に2倍の荷重を追加しても条件はまったく同じであり、耐えられて当然である。
加えて言うならば、降下船の設定上の比重は非常に小さく、水の5%に届かない。当然貨物室も同様であり、見取り図を見る限り船内作業の都合か無闇と空間が多い。(決して貶しているのでない、必要な空間である)従って積載梱包を適切に実行するならば、空間的問題に於いて降下船の貨物区画に限界質量の数倍の貨物を搭載することを妨げるものは無い。
しかし、この事が即ち追加積載可能な質量が「自重X(加速限界G−1G)」になる事を意味しない。この点は注意して欲しい。
先ほど書いた通り、加速Gに耐えられる構造ではある、しかしそれは各部位毎に加わる荷重の想定に基づいてなのである。
貨物を積載する箇所は貨物を満載した状態で加速Gに耐えることが出来るようには作ってあるだろう。先に例に挙げた架空の降下船が500tの積載能力を持つならば、その貨物区画は最大1500tの荷重には耐えられるだろう。だが、その降下船の満載時自重が1000tで3G加速が可能だからと言って、貨物室に500t+2000tを押し込めば、それはやりすぎと言うものだ。(もしかしたら耐えられるかもしれないが)
つまり、3G加速可能な降下船の積載限界は貨物室の積載限界の3倍までと言う事になる。

但し、この話には落とし穴がある。
それは、この計算が適用可能なのは降下船を軌道上で待機させておいた場合だけだ・・・と言う事である。
当然の話ではあるが、降下船が離陸する場合1G加速では対地効果で地表から浮き上がることは出来ても上昇は出来ない。1Gで下に引かれている(正確な表現ではない)からだ。
結果、現在の化学燃料ロケットは有人で3〜7G、無人なら15Gを超える加速で上昇する場合もある。(これは地表近くでの不安定さを避ける意味もある、微小な加速Gで上昇する事は緊急時の回避回復のリソースを狭め外的要因による姿勢変化や位置変化の要因割合を増すからだ、ホバリングに近い操作を望むのは合理的な発想ではない)
勿論推進システムはまだそれをする余力がある、だがそれを実行すれば最悪の場合貨物室の床が抜けるだろう。
それが嫌なら過積載はほどほどにして、軌道上でスモールクラフトで往復搬送を行い限界満載に持っていく事になる。
この点で航空機型とも空力型とも言われるタイプは大気を利用して初速を稼ぎ、高度を上げて遠心力と加速で機動にあがる事も可能だが・・・・滑走距離も長くなるのであまりお勧めは出来ない事に変わりは無い。
何より問題になるのは惑星に着陸する場合だ。大気圏に突入した場合の衝撃的減速を避けるには推進器を下にして速度が秒速500mを超えない程度を維持してゆっくりと降下する事になるだろうが、それは降下の全工程で綱渡りの様な操作を要求する事になるだろう。しかも、1G環境下で実質的に有効な減速は全て1Gに上乗せされる加速度なのだ。逸脱が10%までと定めるならば減速能力は0.1G=約1m/ssにしかならない。前述の500m/s(マッハ1.5弱くらい)から速度0にするのは500秒かかるのだ。とてもやってみたい操船ではない。
そして最大の難関は着地の瞬間だ。脚構造が可也の衝撃を吸収する前提ではあろうが、その衝撃は可也のものになるだろう。乗用車のドアを勢いよく閉めると、閉じた瞬間の部分的な加速度は100Gを超える場合もある。
仮に5Gの加速がその時加わるとすれば、通常積載状態の貨物なら5倍荷重衝撃だが、3倍積載状態ならば受ける衝撃荷重は15倍になる。これは頂けない。こわれてしまいそうだ。
結論を言うならば、緊急時で余程腕に自信があるか、リスクが許容できるのでもない限り、本当の限界はおろか、加速Gの半分までだって積載するのは危険だろう。少なくとも離着陸時にそのまま過積載状態で行なおうとはしないべきだ。

話が可也横にそれたが、その事を前提に惑星軌道からジャンプシップまでの移動に考えを移してみよう。

まずはJPへの所要時間に直結する「加速能力」だ。
件の架空の降下船の場合、貨物室にスペックの3倍に及ぶ1500tの質量を抱え込んでいる。すると総質量は本体500t+貨物質量1500t=2000tになる。この質量は通常運用時の最大質量(満載質量)である1000tの2倍となる。経済推進の加速能力(G)はエンジン質量x50÷6.5なので(※)通常の満載質量で2Gの加速能力を持つ。(巡航出力が1000x2=2000tと言う事)
2000t÷2000t=1Gより、件の降下船は過積載状態で1Gの加速能力を持っている事になる。(勿論推進剤の消費量は2倍になる)
これがユニオン級の場合、積載能力は14x150t+余剰搭載能力32t(だったかしらん?)で2132t、推力が巡航3最大5より2.5G(正確には2.25Gだとは思うがルールには抵抗すまい)、過積載貨物質量は5330tとなり、過積載時総質量は6798tになる。一方巡航出力は満載時自重3600tより3600x1.5=5400t、5400÷6798=0.794より経済推進加速能力は0.8G弱となる。余裕を見るなら0.75Gで考えると良いかもしれない。推進剤消費は1.5倍である。
加速能力が増えれば到着時間は短縮され、下がれば順延されるのが当然だがその具体的数値はわかり難いかもしれない。簡単に転回点まで加速し、転回点から減速するならば「加速Gの平方根分の一」が到着時間の比となる。つまり2G加速が可能なら所要時間は0.707倍、4G加速が可能なら0.5倍になる。逆に加速能力が半分でも所要時間は1.414倍にしかならないし、0.25G加速でも時間は2倍しかかからない。
これらの計算はそれほど難しい物では無いので各位にお任せ・・・しようと思うが降下船の積載能力と合わせて計算するのは骨かもしれない。況してやGM諸兄の日常に於ける諸条件を鑑みるにリストにしておいた方が楽だろう(私もだが)。それはGSJの刊行物にでもするので、それまでお待ち頂きたい。


ものの序ではあるが、逆に積載貨物が少ない場合の事を考えてみよう。
当然自重から未積載貨物質量を差し引いた総重量で加速能力を割れば見かけの加速能力は出るのだが・・・・それをやると大変な事になる。
再び架空の降下船に登場頂くと、貨物室を空にした場合の自重は500tになる。一方加速能力は巡航で2000t、最大で3000t。つまり巡航出力で4G、最大出力では6Gの加速が可能と言う事になる。だが、これは飽く迄も推進装置の能力限界の話に過ぎない。
構造的な事を考えれば恐らく推進装置本体と、それを船殻に接続している部位はその加速に耐えられるだろう。だが、それ以外の部分はどうか?
例えば船室や火器搭載スペースは?もしも各部位が本来の最大加速値である3Gにしか対応していなければ、6Gの加速は構造破壊や永続的な変形か、少なくとも一時的な歪みを生じるだろう。通信機器の外部装置の基部が歪めば正確な通信や観測が不可能となり、管制・操船にも少なからぬ影響を与えるかも知れない、最悪の場合脱落喪失と言った事態に陥らないとも限らない。
つまり、本来の加速能力を超えた加速はするべきでは無いと言う事だ。だとすれば空荷に近い状態での利点と言えば経済性以外に無くなる。(勿論経済推進加速での速度も上がり、時間も短縮されるかもしれない)
だが考えて欲しい。軍用降下船なら兎も角民間貨物降下船で空荷だから推進剤消費が少ないとか早く着くとか言うならば・・・空荷で儲けにならない稼動を避けるべきなのだ。余り計算に値する話でも無いような気がするが如何だろうか?
せいぜいが「空荷(積載貨物が692t未満)のユニオンだから巡航出力で2.5G加速が可能だ、だからJPからの所要時間は1.58分の1になる。ここはG1の恒星系だから本来(1G加速)での所要時間が7日なので、この場合4.43日=106.3時間だね・・・まあ、乗員が文句を言わないならね?と誠淑やかに語るGMを演出可能だと言うだけだ。
ふん、つまらん・・・・でも無いか、本項の主旨そのものだよな(苦笑


※ルールでは1G加速X1日あたりに必要な推進剤質量(又はタンク質量)が記載されている。
 エンジン規模と経済推進効率が比例するであろう事から巡航出力加速までは経済推進の範疇と判断する。
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