M-SUZUKI_blog

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参考掲載・・・軽量級考察其の一

 現在、ワスプ、スティンガー、ローカスト、マーキュリーをはじめとする20t級メックは偵察用メックのスタンダードとしての評価が定着しています。しかし費用対効果を念頭に置いて真剣に検討したとき、その評価は本当に正当なものと言えるのでしょうか?
 20tメックは確かに軽量・安価で整備性も優れているでしょう。しかし敢えて真実を語らせて戴くならば、脆弱かつ攻撃力に欠けているというのも紛れもない事実です。そのメリット・デメリットを改めて考察する事は今後の機体運用を占う意味で決して無駄な話では無い筈です。
 まず価格です。現在最も大量に生産されているSTGを例に挙げさせて戴くなら、中枢9.96、操縦席20、生命維持装置5、エンジン16、ジャイロ60、JJ14.4、装甲3、武装5.1であり、合計133.46。重量係数を掛けて160.152となります。(注、単位は万CB)ああ、勿論皆様方様々な価格で購入なさっておいでであり、一概に価格は断ずる事は出来ませんが、大体こんな所で間違いは無い事と存じます。
 確かに安いことは安いですが……PPCはおろかLLの一発で確実に消滅する腕や、LLの直撃で機能を失いかねない脚はあまりにも頼りがないとは思われませんでしょうか?
 しかし20tメックの脆弱な中枢には、武装を減らして装甲を増加しようにも、その改善に応える能力が欠如しているのです。
 では、それらに対する比較物として、25tで同移動力の偵察機を考察してみます。
 重量にして僅か5tの違いではありますが、比率では25%増しであり、それを裏付けるように性能は大幅に向上しています。
 事実上攻撃力を倍増するとも言える中口径レーザーの1門追加、それを行ってなお装甲に+2t、5tをまわすペイロードキャパシティとアビリティを有しているのです。
 この装甲5t(80p)というのは重要な意味を持っています。 丼勘定ですがメックを大別して考える8箇所の部位全てにPPCの直撃に耐えうる装甲を割り振ることの出来る最低ラインといえるでしょう。もちろん各部位毎に構造上の限界があり、残念ながら頭部と、そして腕部が充分な装甲を割り振ることを許されていないのですが、それでも確実にPPCの直撃に抗い、LLのダメージを退けることが可能だという事実が生存性に大きく寄与することは疑いようもありません。
 では、これだけの性能の飛躍を見せた25tメックの価格はどうなっているでしょうか?
 中枢12.45、操縦席20、生命維持装置5、エンジン25、ジャイロ60……驚く無かれ、この時点では中枢とエンジンの価格以外は同一です。
 JJ18、装甲5、武装が9.1であり、合計は154.55、係数を掛けて193.1875となります。
 この値はSTGの約1.2倍です。重量比よりも小さい事にお気づきでしょうか?
 もしもこれで接敵時の生存性が倍になっているとしたら、大変魅力的な機体だとは言えないでしょうか?簡単な改装機としてMG2本をML1門に換え、その上で弾薬をHSにするという機体も考えられますが、この仕様にいたっては並の中量級の近距離火力に匹敵します。もちろん走行しながらの過熱は無くジャンプしながらでも過熱は4点止まりです。
 当然、偵察任務とは敵との交戦を目的としているわけではなく、優速を生かして接触・交戦に至る前に離脱するのが前提でしょう。しかしそれを敵が快く思わないのも事実です。
 メックに限らず何らかの方法で阻止攻撃を仕掛けてくるでしょう。待ち伏せにせよ追撃にせよ、です。
 そんなとき、僅かな装甲の差が生死を分けることを忘れないでください。追いすがる高速戦車やVTOLを撃退する火力が必要になるかもしれないのです。
 ましてやアサシン等の機体の追撃に対して、牙を剥く事が出来るかどうか?余りに明白な差を生じているのでは無いか?と考えております。
 と、ここまで25t偵察メックの利点ばかり並べてきましたが、公正を期す為に、20tメックにある重要な優越点と、25tメックに残されている深刻な問題を説明しなくてはならないでしょう。
 20tメックの本当の最大の強みは、戦場であまりにありふれているが故の部品調達の容易さです。おそらくスクラップになる数も多い分補充部品も驚くほど溢れているはずです。2個1や3個1と言う機体も決して珍しい存在ではないでしょう。
 一方の25tメックの欠点。それは攻撃力、防御力が整っているが故に、いざ敵と遭遇したときにMWが戦闘衝動を抑えきれない可能性が高いという点です。意図して戦場に投入された場合ならともかく、偵察行動の過程においてはMWに与えるべきでない選択肢を提供しているかも知れません。
 この問題は古くからメック設計者の間でも議論の対象となっており、その過程でチャージャーやシカダと言った・・・失礼ながら・・・迷機が生み出されてきたのです。そして、その試行錯誤は現在もなお繰り返されています。
 ですが、お集まりの皆様。
 今、この時が変革の時です。
 少なくとも同数の20tメックと25tメックが戦場で出会ったなら、その結果は明白です。
 どうか、是非この話を真剣に検討戴きたいと考える次第であります。

 「20t偵察メックは本当に偵察メックの花形たる資格を有しているのか?」・・・ヴォルグラート重工業主催のシンポジウム席上でのある講演より抜粋
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