試しに書いてみよう!の話2
●第ニ回
電離した大気が包括した可燃物を一瞬にして燃え上がらせる。
有効射程は実に100mにも及び、
森林に火を点けるだけならば走行しながらでも困難な作業では無い。
胴体に装備された火炎放射器は見えざる手で火を撒いたかの如く
「燃え上がるエリア」
を展張する。
こいつは核融合炉で生じた熱のおこぼれで稼動する。
・・・と言うと聞こえが悪いが、実にエレガントだ。
電離した大気が包括した可燃物を一瞬にして燃え上がらせる。
有効射程は実に100mにも及び、
森林に火を点けるだけならば走行しながらでも困難な作業では無い。
胴体に装備された火炎放射器は見えざる手で火を撒いたかの如く
「燃え上がるエリア」
を展張する。
こいつは核融合炉で生じた熱のおこぼれで稼動する。
・・・と言うと聞こえが悪いが、実にエレガントだ。
ああ、この気取った台詞は俺のオリジナルじゃぁない。古代の賢者の一人、アイザック・アジマフとか言う爺いが好き好んで使った言葉らしい。
俺、テス曹長 − をっと、お前等が俺を呼ぶ時ぁ「曹長殿」だ、忘れるな? − だ、にそいつを教えたのはクエンドラだったが・・・奴は上官になっちまった。二階級特進ってぇ奴だ、判るな?その意味ぁ?
ま、辛気臭い話は止めだ。
この火炎放射器の話だ。そいつぁこの機体の話でもある。
要はもう少し俺の自慢話に付き合えって事だ。
俺は、昔は火炎放射器ってものは「リキッド状の燃料を噴出して、そいつを燃やすことで炎の柱をぶんまわす」位の認識しかなかったんだ。
こいつ − ファイアースターター − に出会うまでは。
失機者だった俺は歩兵肉薄攻撃部隊に志願し、毎度の様にメックや戦車相手にドンパチやっていた。
をっと、俺を単なる「幸運だった」無鉄砲な奴だとか自暴自棄な夢想主義者と勘違いしないでくれよ?
俺は危ない橋は渡らなかった。無闇矢鱈と「もしかするとチャンスかも知れない」モンに嘴を突っ込んだ所で火傷するのがオチだ。
千載一遇のチャンスってぇのは、思わぬ所に転がっているもんだ。
問題は「そいつにたまたま居合わせる事が出来るか?」
そして「そいつが正真正銘燦然と光り輝くチャンスだって事に気が付く事が出来るか?」
で、何より重要なのは「その時、腹ぁ括れるか?」・・・だ
俺は鼻が利く、戦場じゃぁ引き際を見誤った事は無い。
こないだの襲撃作戦でも俺は生き延びた。
そんな俺でもこいつを手に入れるのは骨だった。歩兵小隊は俺を残して全滅したくらいだ。
火炎も無いのに一瞬にして人が燃え上がるのを見た時は魂消たね。
戦車から噴出される火炎の舌に舐められて身体が燃え上がるのも厄介だが、その瞬間まで認識できないのはもっと恐ろしい。
そりゃ、誰でもそうだとは言わない、むしろ俺ぁ少数派だろう。
見た目にも「はい、燃えちゃいますよ」ってな方が視覚的にもおっそろしいだろうさ。
だが、俺は日々メックの構造も学習している。
あのぞっとしない、メックの核融合炉、あのパワーで灼かれるってぇイメージは俺にとって最高の恐怖であり、歩兵に対する力の象徴だったってぇ訳だ。
どうやってこいつを俺のものにしたのか?そいつは内緒だ、言うに言えない事もあるってもんだ。
ま、首尾良くこいつを分捕ってから、暫くはこいつの修理に追われる事になった。
だが、こいつは俺の苦労のしがいがある良いメックだ。
こいつにぁ件の火炎放射器が4基ついている。(いいか?4基、4基もだ!)
前後左右に1基づつだ。
言うまでも無い事だが、こいつが牙を剥く相手はメックじゃぁない。
歩兵と戦車だ。
言うまでも無ぇが、火炎放射器はえらく熱い。
こんなちっぽけなメックにゃあ荷が勝ち過ぎるんだが、そこはそれ上手い事出来ていて、こいつの補助火器は37mmの重機関砲で、発熱なんてものぁ関係無く撃ちまくれるってぇ塩梅だ。
つまり、俺がこいつを愛機にしている限り、俺の敵は歩兵と戦車だけだって事だ。
任務はいつも最高だった。
俺が追い立てているのは、詰まる処「人生に負けた俺」だ。
最高の気分だ、こいつにぁ誰にも文句は言わせねぇ。俺は勝ちの人生ぇもぎ取ったんだ。
と、まあ、そう思ってたんだが・・・最近になってちょいと風向きが変わってきた。
新たな配属が偵察小隊って処に文句ぁ無ぇ。
だが、小隊長が厄介なんだ。
偵察小隊の任務ってぇにはちょいとばっかし「スリリング過ぎる」っつうのかね?
偵察小隊は強襲小隊じゃ無ぇんだ
そこん処を勘違いしてもらっちゃあこっちぁ大弱りなんだが
最初は良い小隊長だったさ
任務も俺好みで「引っ掻き回して追い立てて剥かしてトンズラ扱く」ってぇ奴で、俺はいつも通り歩兵を追い散らしながら炎で壁をこさえているだけで良かった。
それが変わったのは小隊長が撃墜された日からだ
ご自慢のフェニックスホークは頭を残してアーメン
で、代わりに奴本人ごと頭が無くなっちまったクエンドラのスティンガーにのっけたんだな
見てくれは・・・ま、どうでもいさ
だがな、そのメックで強襲まがいの任務で指揮を執るってなぁマトモじゃ無ぇと思うが・・・どうだ?なぁ
ほらおいでなすった!
煙と林の向こうから見間違え様も無い低いシルエット − 厄介だぜ、こりゃジェンナーじゃ無ぇか? − が接近してくる。
俺の『可愛い可愛い控えめな』ファイアースターターじゃ、ろくすっぽ損害も与えられずに一蹴されちまわぁ
だがな、こっちにも遣り口ってぇのがある・・・まだか?来たな!ジャンのトップヘビー、早く来い!早く!
煽るだけ煽らせて貰うか?
「さあ来な、お前さんの激しすぎるラブコールも1回っきりって約束で受けてやるぜぇ!」
煙に巻かれてちゃ『俺が姑息にも隠れている』って事にしか気がついちゃいるめぇ?
カマン!お前さんを待っているのは中口径レーザーなんて冷淡なお出迎えじゃぁ無ぇぜ!熱い抱擁を受け入れてくんな!!!
誘いに乗った訳でもなかろうが、ジェンナーは一気に距離を詰める。
俺は火炎放射器3基から灼熱の塊を吐き出し、ジェンナーはその中に飛び込んだ。
だが、同時にファイアースターターは一斉射撃の衝撃で無様に転倒する。
手前ぇの熱と俺に炙られた熱で一気に動きが鈍くなったぁ言え、この状況ではジェンナーが「負ける要素」なんざ見当たら無ぇだろう?
ジェンナーの物騒な4門の中口径レーザーが俺を指向する。
そうさ、俺に止めを刺す気だな?
だが
「ったれぇ!!!!」
コクピットの重厚な装甲を貫いて轟音が響き、それに負けない大音量の音声がラジオから流れ出る。
その瞬間戦場を支配するのはジェンナーを彩る閃光と破砕音のみ、周囲を徘徊している筈の敵メックも存在感を喪う。
ジェンナーの脚が根元から折れた。
潤滑剤と冷却液とが急速に拡散しながら撒き散らされ、装甲に撥ねたそれは瞬時に蒸発する。
無謀な挑発を繰り返す俺に向かって糞っ垂と喚いたのか、縁起担ぎに当たれと叫んだのかは知らないが、ジャンの射撃は確かに当たった。
9発のSRMの着弾がさっきの俺の射撃で痛んだ装甲に止めを刺したってぇ訳だ。
惜しかったなぁ、ジェンナーの奴さん、あんまり熱くて撃つ踏ん切りが着かなかったんだろう?
俺はさっさと立ち上がるとその場を後にした。
もうそろそろ護衛部隊が到着する筈だ。
鼻持ちなら無い傭兵共だが、腕は確からしい。
引っ掻き回したこの戦場で敵を駆逐するには連中が適任ってえ訳だ。
俺は歩兵狩りに専念させて戴く。
『イッツ マイ ビジネス』
ラジオから小隊長の声が響いた。
「ピギーランプ3、2時の方向、観測班、潰せ、残すな」
仰せの通りに。
どうも無駄口をきいてる暇ぁ無くなった様だ
戦場には55tの重メックが2機飛び込んできた。
残った敵メックは奴等に「お任せ」って訳だ。
どうも俺は今の隊長の遣り方がひどく気に入っているらしい。
俺、テス曹長 − をっと、お前等が俺を呼ぶ時ぁ「曹長殿」だ、忘れるな? − だ、にそいつを教えたのはクエンドラだったが・・・奴は上官になっちまった。二階級特進ってぇ奴だ、判るな?その意味ぁ?
ま、辛気臭い話は止めだ。
この火炎放射器の話だ。そいつぁこの機体の話でもある。
要はもう少し俺の自慢話に付き合えって事だ。
俺は、昔は火炎放射器ってものは「リキッド状の燃料を噴出して、そいつを燃やすことで炎の柱をぶんまわす」位の認識しかなかったんだ。
こいつ − ファイアースターター − に出会うまでは。
失機者だった俺は歩兵肉薄攻撃部隊に志願し、毎度の様にメックや戦車相手にドンパチやっていた。
をっと、俺を単なる「幸運だった」無鉄砲な奴だとか自暴自棄な夢想主義者と勘違いしないでくれよ?
俺は危ない橋は渡らなかった。無闇矢鱈と「もしかするとチャンスかも知れない」モンに嘴を突っ込んだ所で火傷するのがオチだ。
千載一遇のチャンスってぇのは、思わぬ所に転がっているもんだ。
問題は「そいつにたまたま居合わせる事が出来るか?」
そして「そいつが正真正銘燦然と光り輝くチャンスだって事に気が付く事が出来るか?」
で、何より重要なのは「その時、腹ぁ括れるか?」・・・だ
俺は鼻が利く、戦場じゃぁ引き際を見誤った事は無い。
こないだの襲撃作戦でも俺は生き延びた。
そんな俺でもこいつを手に入れるのは骨だった。歩兵小隊は俺を残して全滅したくらいだ。
火炎も無いのに一瞬にして人が燃え上がるのを見た時は魂消たね。
戦車から噴出される火炎の舌に舐められて身体が燃え上がるのも厄介だが、その瞬間まで認識できないのはもっと恐ろしい。
そりゃ、誰でもそうだとは言わない、むしろ俺ぁ少数派だろう。
見た目にも「はい、燃えちゃいますよ」ってな方が視覚的にもおっそろしいだろうさ。
だが、俺は日々メックの構造も学習している。
あのぞっとしない、メックの核融合炉、あのパワーで灼かれるってぇイメージは俺にとって最高の恐怖であり、歩兵に対する力の象徴だったってぇ訳だ。
どうやってこいつを俺のものにしたのか?そいつは内緒だ、言うに言えない事もあるってもんだ。
ま、首尾良くこいつを分捕ってから、暫くはこいつの修理に追われる事になった。
だが、こいつは俺の苦労のしがいがある良いメックだ。
こいつにぁ件の火炎放射器が4基ついている。(いいか?4基、4基もだ!)
前後左右に1基づつだ。
言うまでも無い事だが、こいつが牙を剥く相手はメックじゃぁない。
歩兵と戦車だ。
言うまでも無ぇが、火炎放射器はえらく熱い。
こんなちっぽけなメックにゃあ荷が勝ち過ぎるんだが、そこはそれ上手い事出来ていて、こいつの補助火器は37mmの重機関砲で、発熱なんてものぁ関係無く撃ちまくれるってぇ塩梅だ。
つまり、俺がこいつを愛機にしている限り、俺の敵は歩兵と戦車だけだって事だ。
任務はいつも最高だった。
俺が追い立てているのは、詰まる処「人生に負けた俺」だ。
最高の気分だ、こいつにぁ誰にも文句は言わせねぇ。俺は勝ちの人生ぇもぎ取ったんだ。
と、まあ、そう思ってたんだが・・・最近になってちょいと風向きが変わってきた。
新たな配属が偵察小隊って処に文句ぁ無ぇ。
だが、小隊長が厄介なんだ。
偵察小隊の任務ってぇにはちょいとばっかし「スリリング過ぎる」っつうのかね?
偵察小隊は強襲小隊じゃ無ぇんだ
そこん処を勘違いしてもらっちゃあこっちぁ大弱りなんだが
最初は良い小隊長だったさ
任務も俺好みで「引っ掻き回して追い立てて剥かしてトンズラ扱く」ってぇ奴で、俺はいつも通り歩兵を追い散らしながら炎で壁をこさえているだけで良かった。
それが変わったのは小隊長が撃墜された日からだ
ご自慢のフェニックスホークは頭を残してアーメン
で、代わりに奴本人ごと頭が無くなっちまったクエンドラのスティンガーにのっけたんだな
見てくれは・・・ま、どうでもいさ
だがな、そのメックで強襲まがいの任務で指揮を執るってなぁマトモじゃ無ぇと思うが・・・どうだ?なぁ
ほらおいでなすった!
煙と林の向こうから見間違え様も無い低いシルエット − 厄介だぜ、こりゃジェンナーじゃ無ぇか? − が接近してくる。
俺の『可愛い可愛い控えめな』ファイアースターターじゃ、ろくすっぽ損害も与えられずに一蹴されちまわぁ
だがな、こっちにも遣り口ってぇのがある・・・まだか?来たな!ジャンのトップヘビー、早く来い!早く!
煽るだけ煽らせて貰うか?
「さあ来な、お前さんの激しすぎるラブコールも1回っきりって約束で受けてやるぜぇ!」
煙に巻かれてちゃ『俺が姑息にも隠れている』って事にしか気がついちゃいるめぇ?
カマン!お前さんを待っているのは中口径レーザーなんて冷淡なお出迎えじゃぁ無ぇぜ!熱い抱擁を受け入れてくんな!!!
誘いに乗った訳でもなかろうが、ジェンナーは一気に距離を詰める。
俺は火炎放射器3基から灼熱の塊を吐き出し、ジェンナーはその中に飛び込んだ。
だが、同時にファイアースターターは一斉射撃の衝撃で無様に転倒する。
手前ぇの熱と俺に炙られた熱で一気に動きが鈍くなったぁ言え、この状況ではジェンナーが「負ける要素」なんざ見当たら無ぇだろう?
ジェンナーの物騒な4門の中口径レーザーが俺を指向する。
そうさ、俺に止めを刺す気だな?
だが
「ったれぇ!!!!」
コクピットの重厚な装甲を貫いて轟音が響き、それに負けない大音量の音声がラジオから流れ出る。
その瞬間戦場を支配するのはジェンナーを彩る閃光と破砕音のみ、周囲を徘徊している筈の敵メックも存在感を喪う。
ジェンナーの脚が根元から折れた。
潤滑剤と冷却液とが急速に拡散しながら撒き散らされ、装甲に撥ねたそれは瞬時に蒸発する。
無謀な挑発を繰り返す俺に向かって糞っ垂と喚いたのか、縁起担ぎに当たれと叫んだのかは知らないが、ジャンの射撃は確かに当たった。
9発のSRMの着弾がさっきの俺の射撃で痛んだ装甲に止めを刺したってぇ訳だ。
惜しかったなぁ、ジェンナーの奴さん、あんまり熱くて撃つ踏ん切りが着かなかったんだろう?
俺はさっさと立ち上がるとその場を後にした。
もうそろそろ護衛部隊が到着する筈だ。
鼻持ちなら無い傭兵共だが、腕は確からしい。
引っ掻き回したこの戦場で敵を駆逐するには連中が適任ってえ訳だ。
俺は歩兵狩りに専念させて戴く。
『イッツ マイ ビジネス』
ラジオから小隊長の声が響いた。
「ピギーランプ3、2時の方向、観測班、潰せ、残すな」
仰せの通りに。
どうも無駄口をきいてる暇ぁ無くなった様だ
戦場には55tの重メックが2機飛び込んできた。
残った敵メックは奴等に「お任せ」って訳だ。
どうも俺は今の隊長の遣り方がひどく気に入っているらしい。
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