M-SUZUKI_blog

GSJ主幹”M-鈴木”の、日常とかバトルテックの話とか。

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試しに書いてみよう!の話・・・・・第4回

 走る、回り込む、敵を捉える。
 モニターの片隅にその姿は膨れる、フレームに収まり切らなくなる直前、機体の揺動に合わせてモニターサイトの中心を横切る。
 その直前、トリガー。
 左右同時に発射される筈、けれどほんの僅かなタイムラグは − 少しでもモーメントを減らす為に頭部を挟み込んで緊密に装備されている、だけど − 軽量の機体に危険な程のモーメントを与える。

 コツは倒れ込む事。
 父はそう言った。
 ジャベリンは僅か30tの機体、その重量の過半が上半身に集中している、トップヘビーの代名詞。
 高速機動を約束する長い脚、しわ寄せを食った小柄なボディ、2基の6連短距離ミサイルとコクピットにGM180エンジン(ついでにゲージ2ジャイロ)の集中配置じゃ結果は明らか。
 おかげでジャンプも侭ならない。
 ボディのサイドには余裕が無い、だからジャンプジェットが割り込む余地は胴体中央と左右の脚にしかない。
 リフトされるのでは無く、自分で駆け上がる感覚。
 好きな、受け入れられない思い。
 だから、ジャベリンで地形を通過する事は、操縦能力を試される事と同義。

 今、この瞬間も又、技量を証明する時。
 不自然に傾いだ前傾姿勢から反動を利用して重心移動、軸足を踏み込んで走行態勢を維持したまま機体を持ち上げる。
 製造工程、ミサイルに込められた「破壊の意思」と言う名の妄執。
 それが敵を包む。
 その意思が私を叫ばせる。
 「ったれぇ!!」
 咽から外界へ迸り出る、表現形の一つ。
 私を表現しない私の表現。
 命中
 着弾の衝撃に影はもんどり打って倒れ、跳ね飛ばした土塊と爆煙の向こうに消え・・・
 音は実体を伴う波となり機体を、そして装甲に鎧われた操縦席を貫く。
 走行音とは別の種類の波、包み込む音と貫く音
  音が私を加速する
   加速した私が音を生み、その音が更に私を加速して行く
    前へ―――――前へ―――――前へ―――――
 来る
 1機のセンチュリオンが林の影から姿を見せる。
 射線が私を捉える、遅い。 跳ぶ 前へ 高みへ
 轟音、さっきまでいた場所から立ち上る土煙。
 噴射するガスと大口径の砲弾の炸裂音の二重奏が足元から駆け上がってくる。
 頭上を飛び越えられるのは屈辱?それとも驚愕?
 慌てて振り返っただろうノロマ君に背を向けたまま、走る。
 後から、波が来た。
 ノロマ君、戸惑う暇も、勿論、私に答える暇も貰えなかった。
 信用の置けない、誇りを持たぬ者達、傭兵。
 今の私達の生命線。
 私の認識外からの狙い清ました射撃。
 あのメックは今どこから現れたのか?
 圧倒的質量と存在感を闇に塗り込めた55tの猟犬
 獲物の血に塗れたその肉体は、獲物の肉体で贖われていると言う。
 その存在に苛立つ
 利用されたから?
 違う
 何故ここにいる?
 そう感じる
 だから
 だから苛立つ
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 戦闘は、取り敢えず、お終い。
 戦場に置き去りの残骸。
 だけど私達の今日の仕事はこれから。
 汚らしい残飯処理
 唾棄すべき弱いもの虐め
 標的は回収部隊。
 目的は機体回収の妨害より、従事する人員の殺傷。
 「今回の戦果は敵にとりあらゆる部隊に対する護衛戦力が必要であるとの戦訓になるであろう。」
 出撃前、大尉の訓示。
 待つ
 闇の中
 出力を限界まで絞っても、まともなセンサーを持つ相手には呼びかけてるのも同じ
 だから火を落として待つ。
 中尉は私のシグナルを待っている。
 朝まで待っても何も来なければ良い。
 シグナルなど送らなくても済めば良い。
 だけど、無限軌道の軋みが聞こえて来た。
 裏切られた − 自分勝手な想い
 だが裏切られたと感じる、それが方便になるから。
 戦闘要員なのだから、お互い覚悟の上、納得づくの話の筈
 誰かの言った気休め。
 彼ら、会話を交わしている。密やかな会話、不安の発露。
 そう、その不安は現実の物になる。
 望まない現実を齎す事が私の仕事
 スイッチを押す、それだけの行為
 ワイヤレスは殺傷兵器じゃ無い、そのSWを入れる、ただそれだけの行為
 シグナルを入れる。
 今から、敵に有効な戦力が無い限り、私に仕事は無い
 ささやかな気休め
 いや
 あったとしても仕事は無い。
 敵のメックの脚を蹴り折る為だけに同行したも同じ、傭兵のメック
 彼らは今も後方にいる。
 何かあれば彼らが来る。
 喜び勇んで。
 だから
 私の仕事は中尉と曹長の「成果」を確認する事。
 私の「成果」じゃ無い
 追いたてられる工兵
 一方的虐殺?
 だけど、これは戦争
 形は違っても彼等は兵士
 頭を、心を締め付ける様な音
 気分が悪い

 この作戦は中尉が上申したものだと、後で知った。
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 思惑通りの結末
 次から、私たちも血を流す
 激しい出血に耐え切れない側が負けるゲーム
 血を流したくなければ他人を使うしかない
 部隊は益々傭兵を多用するだろう。
 戦闘は泥沼化する。
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